偽史邪神殿

なんでも書きます

本の感想

奇想の解体、虚飾の逃避『凌ぎの哲 雀荘争奪編』感想

ついに『凌ぎの哲 雀荘争奪編』がリイド社から発売された。連載終了から17年間にわたって単行本化されていなかったシリーズ最終章を、ようやく手に取ることができるようになった。自分も今回、初めてこの話を読むことができた。 『凌ぎの哲』はほんとうに面…

ギャンブル漫画としての『根こそぎフランケン』の感想

『根こそぎフランケン』を、かなり面白く読んだ。 中心人物はふたり。図体がでかくて頭は悪いが、力でねじ伏せる麻雀を打つ天才・フランケンと、頭も良いし麻雀も上手いがとある挫折体験をして以来、本気で麻雀を打っていない中年男・竹井。そこにさらに何人…

サーシャ・フィリペンコ『赤い十字』感想 / 赤黒いファミリーヒストリー

「もしこの惨状を全世界に知らせなかったら、半世紀後には自らの意思でシャベルからものを食べようとする人間が出てくる。 (…)その人たちが囚われているのはもはや収容所ではなく、その人自身なんだからね」(P175) 赤い十字 作者:サーシャ・フィリペンコ…

シルヴィア・モレノ=ガルシア『メキシカン・ゴシック』感想 / 混交するもの されるもの

メキシカン・ゴシック 作者:シルヴィア モレノ=ガルシア 早川書房 Amazon 1950年のメキシコを舞台にしたゴシック・ホラー。うら若き令嬢ノエミ・ダボアダは、田舎に嫁いだ従姉妹からの助けを求める手紙に応じ、彼女の住むドイル家の屋敷に向かう。しかしそこ…

エルヴェ・ル・テリエ『異常(アノマリー)』感想 / 死後評価されることについて

死後評価されたい。 オタクなら誰でも一度は夢見ること……つまり「死後評価されること」について考えてみたい。 不遇の天才だとか不世出の逸材とか、世に色々な「報われない才能」というのはあるけれど、中でも一番かっこいいのは「死後評価される」ことだ。…

『文学少女対数学少女』を読んでなぜ鳥肌が立ったのか〈感想〉

文学少女対数学少女 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 作者:陸 秋槎 発売日: 2020/12/03 メディア: Kindle版 「気持ちを証明するにはどうしたらいい?」 「さあね。それには昔からみんな悩んできたんだ」 ──桐野夏生「独りにしないで」 陸秋槎の推理小説『文学少女…

だましだまし、華文ミステリを読もう!

どうやら世間では中国の現代小説というのがひそかなブームになってるらしい。華文ミステリというジャンルもここ数年やたらもてはやされるようになったし、『三体』もようやく和訳されて中国現代小説の面白さというのがいよいよ浸透しつつあるのかな、と思う…

『クロック城』に囚われている

あまりにもこのページを放置しすぎたため、今回の更新は208日ぶりの更新となる。(型通りのオタクならここで「2億年ぶり」だとかなんとか適当な誇張をするところであるが、筆者はそのようなことはしない。筆者はオタクではないので)。 さすがにこのまま腐ら…

[少女庭国]とはなんだったのか

〔少女庭国〕 作者: 矢部嵩 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2014/05/22 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (1件) を見る 〔少女庭国〕 (ハヤカワ文庫JA) 作者: 矢部嵩 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2019/06/20 メディア: 新書 この商品を含…