偽史邪神殿

なんでも書きます

2017-2022 私的ボカロベストまとめ

 2017年から年末にボカロベストを考えるようになって、今年で六年目になった。自分の中ではボカロと向き合ううえでのルールみたいなものがいくつかあって、それは昔からあまり変わっていないのだが、文章にしたことはなかったので書いてみる。

 2017~2022年の各年ベストの一覧は記事の後半に。

 

 私には理想のボカロ曲というものがある。それはトーマの曲だ。特に「九龍レトロ」は私にとってボカロ原体験であり、原点にして頂点だ。爾来、私にとってボカロを聴くという行為はトーマを超えるだれかを探し続ける作業といえるかもしれない。もちろんボカロは表現方法にすぎず、その中にはポップスもロックもR&Bも内包されている。たったひとつの正解などありはしないけど、それでもやはり自分にとってぜったいの基準はそこなのだろう。

 年末に選ぶボカロベストは、そういう意味で自分にとっての理想に近い曲を選ぶ行為ということになる。ただそれだといかにも漠然としているし、もうちょっと細かく分解していきたい。自分が曲を聴く上で尺度となるのは次のような要素だ。

 第一、音。メロディでもコードでもリズムでもなんでも良いけど、音にオリジナリティがあってほしい。自分はピアノしかわからないから、音楽理論の話はできないが、やっぱり意外性のある音を聴きたいという気持ちはある。

 第二、詞。これがいちばん難しいかもしれない。曲の歌詞は凡庸であってはならない。特に自分は日本語ラップを聴くようになってからいっそう詞への執着心が強まった。あくまで個人的なこだわりでしかないが、意外性のある、それでいて納得感のある言い回しや韻が曲の中に一箇所でもあれば良いと思う。

 第三、ボカロを使うことの意味。これはずっと考えている。リスナーである自分がずっと考えているのだから、ボカロPさんサイドにはもっと考えてもらいたいと思う(身勝手)。ボカロは楽器だ。デスクトップミュージックだ。肉声とは根本的に異なる。ボカロの曲はボカロを使うことに”理由”がなければいけないと思う。

 自分はJ-POPを聴くことが絶無といってよい環境に育ったため、未だに肉声の日本語曲を聴くことに強い違和感がある。肉声の情報量に耐えられないのではないかと思う。これに対してボカロはある程度「声の形」がコントロールされているからありがたい。だから自分はボカロPが肉声で歌うようになってもほとんど聴き続けられた試しがないし、良い曲を作っていたとしても興味を失ってしまうことが多い(日本語ラップもよく聴くが、これはラップという歌唱法が特殊で日常会話に近いから許せている)。

 そうした経緯もあって、ボカロを聴くときにしばしば「ボカロたる意味」を考える。この歌は肉声でも代替可能なのか、ボカロが歌う意味があるのか。最近はSynthesizer Vをはじめ完全に不気味の谷を突破した音声ソフトが存在している。もし「人間らしく歌うソフト」がほしいのならそういうものを使えば良い。でも個人的には、ボカロは人間らしくあるよりも機械らしくあってほしい。自分が好きなのは、古いバージョンの初音ミクやGUMIのような、明らかに機械とわかる声だからだ。こんなふうに書くと懐古趣味のようにも思えるが、でも現在でもボカロの声をあえて人間らしく調声しないPは多い。

 それはさておき、声の話はあくまで一例で、とにかくその曲がボカロの曲であるということになんらかの物語があってほしいのだ。ボカロはJ-POPのサブジャンルであってほしくないし、新人ポップアーティスト登竜門でもない。別にそう思っているひとがいるのは構わないが、こちらとしてはそういう姿勢でボカロを聴いている。

 

 以上の話は所詮、いちリスナーのお気持ち表明にすぎないので意味はない。ただ、以下の年間私的ベストがどんな尺度で評価されているのかを示すうえで、いっていの透明度を担保できるのではないかと思う(情報公開制度)。

 

2017年

 砂の惑星/ハチ

 ドラマツルギー/Eve

 タイムイーター/MI8k

 ボカロはダサい/ピノキオピー

 レミングミング/かいりきベア

 ルサンチマン・クラブ/しーくん

 シックシックシック/ピノキオピー

 アクシデントコーディネイター/MI8k

 夢遊病者は此岸にて/こんにちは谷田さん

 最高級のディナーショウ&ジーニアス・ジーザス・シーラカンス/犬丸芝居小屋

◆振り返ってみると、2017年はかなりいい加減に選んだのだろう。そもそもどういう経緯で選んだのかも覚えていない。思えばここに挙げた一線級のボカロPたちもほとんどが様々な理由で業界を去ってしまった。

 

2018上半期

 グリム/しじま

 ガランド/ピコン

 ディカディズム/ぬゆり

 ヨヅリナ/ピノキオピー

 SNOBBISM/Neru&z'5

 ボイリング・ナイト/MI8k

 悪魔の踊り方/こんにちは谷田さん

 だれかの心臓になれたなら/ユリイ・カノン

 メルティランドナイトメア/はるまきごはん

 ポジティヴ・ハラスメント!!!/和田たけあき

2018下半期

 シャリューゲ/*Luna

 劣等上等/Giga×Reol

 ベノム/かいりきベア

 トーキョーゲットー/Eve

 アスター/はるまきごはん

 ビビッド/あめのむらくもP

 ばけものぐるい/ユリイ・カノン

 ミスリード・ミスリード/Omoi

 スチールワンダ/はるまきごはん

 ノルア・ドルア・エー&ビー/すりぃ

2018通年

 ガランド/ピコン

 シャリューゲ/*Luna

 劣等上等/Giga×Reol

 ベノム/かいりきベア

 ヨヅリナ/ピノキオピー

 SNOBBISM/Neru&z'5

 トーキョーゲットー/Eve

 スチールワンダ/はるまきごはん

 悪魔の踊り方/こんにちは谷田さん

 ロックンロールイズペット/MI8k ※CD音源

◆2018年からは上下半期で分割するようになった。改めて見ると名曲ぞろいで、この年は10年代ボカロの円熟期といっても良かったのではないかと思う。

 

2019上半期

 ミザリィ/ルワン

 奇跡さえも/Omoi

 幸せの測り方/ぺむ

 乙女解剖/DECO*27

 青へ向かう/シャノン

 アンヘル/かいりきベア

 プラシーボ/蜂屋ななし

 アンチリアリズム/*Luna

 内臓ありますか/ピノキオピー

 INDETERMINAL UNIVERSE/ゆうゆ

2019下半期

 春嵐/john

 シビュラ/wotaku

 ルマ/かいりきベア

 玉葱+/ピノキオピー

 雨に酔う/あめのむらくもP

 ルーマー/ポリスピカデリー

 チョコレートミルク/あぷえら

 うらめしヤッホー/和田たけあき

 トラフィック・ジャム/煮ル果実

 Gimme×Gimme/八王子P×Giga

2019通年

 乙女解剖/DECO*27

 青へ向かう/シャノン

 アンヘル/かいりきベア

 アンチリアリズム/*Luna

 ルーマー/ポリスピカデリー

 自転車でおいでよ/MI8k※

 内臓ありますか/ピノキオピー

 うらめしヤッホー/和田たけあき

 エス・オー・エス/カラスヤサボウ ※CD音源

 INDETERMINAL UNIVERSE/ゆうゆ ※CD音源

特別枠 downhill/Gyoson

◆トーマがGyoson名義で復活したのが嬉しすぎて特別枠にねじ込んでしまった年。Gyosonの曲は本人歌唱だが、コーラスでボカロが入っているからOKという理屈だった。

 

2020上半期

 一角獣/てにをは

 下手者/はるふり

 君と散る。/才歌

 メイレイン/emon

 さよなら、優等生/ちいたな

 Convenient Singer/ワカバ

 シニカルナイトプラン/Ayase

 シャーデンフロイデ/ど〜ぱみん

 Summer goes by/____natural

 (sm36440133 *無題)/x0o0x_

2020下半期

 ヒール/ルワン

 KING/Kanaria

 Ladylike/KIRA

 赤い月/__natural

 バケモノ信者/マイキP

 GETCHA!/Giga, KIRA

 ラヴィット/ピノキオピー

 魚類による考古学/シャノン

 未踏の夜に賭し足掻け/4ma15

 波縫いハートビート/るーぱあP

2020通年

 Ladylike/KIRA

 一角獣/てにをは

 ふたりの/はるまきごはん

 魚類による考古学/シャノン

 Convenient Singer/ワカバ

 シニカルナイトプラン/Ayase

 未踏の夜に賭し足掻け/4ma15

 波縫いハートビート/るーぱあP

 Summer goes by/____natural

 (sm36440133 *無題)/x0o0x_

◆この年あたりがいちばん真剣にボカロを聴いていた気がする。

 

2021上半期

 ケプラー/伊根

 花となれ/雄之助

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 トワナイ/真島ゆろ

 深夜徘徊/シャノン

 ナイトフォール/伊根

 アンビバレンス/すりぃ

 セイクリッド/____natural

 レトロポリス/R Sound Design

 ノンブレス・オブリージュ/ピノキオピー

2021下半期

 悪霊/john

 GURU/じん

 Navy/雄之助

 ''''''/x0o0x_  *https://youtu.be/skSgsOfTjms

 CH4NGE/Giga

 神っぽいな/ピノキオピー

 おおきくなった恐竜/シャノン

 Beat Eater/ポリスピカデリー

 フランケンX/煮ル果実×はるまきごはん

 スーパーノヴァ/Aqu3ra×かいりきベア

2021通年

 GURU/じん

 ''''''/x0o0x_ 

 ケプラー/伊根

 花となれ/雄之助

 神っぽいな/ピノキオピー

 おおきくなった恐竜/シャノン

 Beat Eater/ポリスピカデリー

 私のドッペルゲンガー/DIVELA

 レトロポリス/R Sound Design

 フランケンX/煮ル果実×はるまきごはん

◆ボカロ史におけるターニングポイントはいくつかあるけど、近年では特に可不の登場が無視できない。可不は再現度が著しく高いし、花譜がバリバリに活躍している中で出てきたからこそボカロと人間の境界を破壊してしまった。自分の中でもどう向き合っていくべきか、未だに答えが出ていない。

 

2022上半期

 A/はるふり

 消えろ/じん

 キメラ/DECO*27

 ステラの座/雄之助

 Boi/ポリスピカデリー

 スティールユー/Omoi

 僕らの最終戦/シャノン

 トリコロージュ/煮ル果実

 ショウコ隠滅、少女純潔/みつあくま

 月光/はるまきごはん feat.キタニタツヤ

2022下半期

 月光/にちり

 熱異常/いよわ

 GEDO/daraku

 四十九日/シャノン

 Journey/DECO*27

 しゃしゃてん/一二三

 ユニコーンガール/Kai

 透明色の今日に/HiFi-P

 ドーピングダンス/STEAKA

 ワンダールインズ/晴いちばん

2022通年

 GEDO/daraku

 キメラ/DECO*27

 しゃしゃてん/一二三

 Boi/ポリスピカデリー

 スティールユー/Omoi

 透明色の今日に/HiFi-P

 僕らの最終戦/シャノン

 トリコロージュ/煮ル果実

 ワンダールインズ/晴いちばん

 月光/はるまきごはん feat.タニタツヤ